ChatGPTで良い文章書ける人・書けない人の差 要約から文章を作る「逆向き文章法」のやり方

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以上で述べた「逆向き文章法」は、文章を書く最初の段階を起動させるのに有効だ。

文章を書く場合に最も難しいのは、書き始めることなのである。つまり出発慣性が大きいのだ。この段階を生成系AIの力を借りて突破しようというのが、「逆向き文章法」の神髄である。

「3000字の文章を書く必要があるのだが、どこから手を付けてよいのかわからない」といった場合があるだろう。

確かに、いきなり3000字の文章を書くのは大変だ。しかし、ツイート程度の文章を6本書くことはできるだろう。それによって「逆向き文章法」で3000字程度の文章が得られれば、それを修正することで作業を進めていくことができる。何もないところで文章を書くのは困難だが、文章を直すのは、それより容易なのだ。

ただし、この作業にはかなりの時間がかかることもある。だから、文章を書く時間が全体として短くなるわけではない。重要なのは、文章を書く作業が楽になることだ。

出来上がったものは、AIが出力したものとは大きく異なるものになるだろう。場合によっては、AIが出力した文章は、影も形もなくなるだろう(できれば、そうなるまで推敲を続ける)。そうなれば、これはAIが書いた文章ではなく、あなたが書いた文章だ。

良い感性、アイデアを持っている人が良い文章を書ける

以上の過程において、文章を書く主導権は人間が握っている。AIは補助しているだけだ。

だから、誰もが同じ結果を得られるわけではない。重要なのは、出発点での良い要約だ。良いアイデアを持っている人がより要約を書ける。そして良い文章を書くことができる。また、文章に関して正しい感性を持っている人が、推敲過程を通じて、良い文章に仕上げることができる。

文章を書く方法がこれまでとは変わるのだが、良いアイデアを持ち、よい感性を持っている人がよい文章を書けることに変わりはない。

なお、言うまでもないことだが、データの分析作業などがあるときには、この方法だけですべてを書くことはできない。また、新聞記者のように取材して書くことも、この方法だけではできない。ただし、分析結果や取材内容をまとめるためには有用だろう。

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野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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