インタビュー(宮 一志教授)

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研究内容について

ーー研究内容について教えてください。

宮氏:現在、私は教育学部に所属しています。この学部は元々人間学部として設立され、教員養成を行ってきました。私がここに来た理由は、特に病気や障害を持つ子供たちが成長期にできる限り自立した生活を送れるよう支援体制を考案することにあります。

以前、小児科医として病院で勤務していた際、病気や障害を持つ子供たちの将来的な自立は、医療だけでは実現困難だと感じました。

そのため、様々な関係者と協力し、子供たちの自立を支援する必要があると考えるようになりました。子供たちが多くの時間を過ごす学校や教育は、この協力の上で非常に重要な役割を果たします。

特に、将来的な自立を考える上では、医療と教育の連携が不可欠です。子供たちの成長を支援し、彼らが豊かな環境で成長できるような体制を作ることが私の目標です。この目標に向けて、関連する様々な側面を研究し、明らかにしていきたいと考えています。 

ーー元々は医学の分野でお仕事をされていたとのことですね。

宮氏:はい、その通りです。 

ーー現在も医学の分野で活動されているということですか?両方を兼務されているのでしょうか?

宮氏:実は今も週に1回、外来診療を担当しています。私の専門は神経疾患で、特に脳や神経、筋肉の病気を抱える子供たちの診療を行っています。残念ながら、完全に障害を解消し、健康な状態に回復させることが難しい病気が多いのですが、様々な生活上の制約を抱えながらも成長していく子供たちを診ることになります。そうした慢性疾患を持つ子供たちのケアを、継続して行っています。

ーーそれでは、慢性疾患を持つ子供たちの継続的なフォローアップに関して、人間科学の分野にも足を踏み入れ、研究を進めているということですね。

宮氏:はい、その通りです。実は、医療と教育の分野がどのように連携していけばよいのか、その点を深く考えた結果、私はこの道を選びました。

私は元々、医療の分野でのみ教育を受けてきましたが、教育分野の専門家やその環境に身を置くことなしには、両分野の効果的な連携は難しいと感じたのです。そのため、人間科学の分野にも進出し、こちらで研究を続けているというわけです。

ーー専門の分野についてお聞かせいただけますか?

宮氏:私は特別支援教育の分野で学生の指導を担当しています。これは、病気や障害を持つ子供たちが通う特別支援学校の教師を目指す学生たちを対象としたコースです。私の目標は、これらの学生たちが医療と教育の分野で効果的に連携を図れる教育者として成長することをサポートすることです。

同時に、私自身も教育現場で得た様々な事例を医療分野に適用し、そこへ提供することで、最終的には医療と教育の間の連携を強化することが重要だと考えています。現在、そのような活動を進めているところです。

ーー ありがとうございます。先ほどのお話にも触れられていましたが、先生の研究の特徴について、もう少し詳しく教えていただけますか?

宮氏:はい、私の研究では特に、障害や病気を持つ方々を支援する上での多職種連携の重要性に注目しています。子供たちのケースでは、医療、教育、福祉、行政といったさまざまな分野からの支援が必要です。これらの多職種が連携することは、障害や病気を持つ人々、特に子供たちを支える上で非常に重要なテーマとなっています。

ただ、連携の重要性は広く認識されていますが、実際にどのように連携を進めるかというのは、実践的な観点から見ると難しい問題です。連携を口で言うのは簡単ですが、それを実現するためには様々な課題があります。私の研究では、これらの課題を解決し、より効果的な連携の進め方を見出すことを主な目標としています。

研究を始めたきっかけについて

ーーありがとうございます。それでは、次の質問に移ります。先生が現在の研究を始められたのはいつ頃ですか?

宮氏:私が教育との連携に注目し始めたのは、もともと附属病院で小児科の診療をしていた時期からです。私は小児科で、病気や障害を持つ子供たちの診療に携わっていましたが、その子供たちが医療面では安定していても、学校生活においてはうまくいっていないケースが目立ちました。具体的には、不登校になる子供たちが多かったのです。

これらの子供たちは、様々な障害や知的な問題を抱えていました。そのため、学校での勉強が難しくなったり、学校での受け入れがスムーズに進まなかったりすることがありました。これらの経験が、子供たちにとって辛く、結果として不登校につながっていると考えられます。この問題に注目したことが私の現在の研究の出発点となりました。

私の関心は、医療的には安定しているが学校に通っていない、いわゆる不登校の子供たちに向けられています。これらの子供たちは、学校に行かないことで社会との接点を失い、大人になってもそのまま引きこもりのような状態になるリスクがあります。これは自立において大きな障害となってしまいます。

この問題に対処するため、私は2010年頃から、本格的に学校と連携して不登校の子供たちが社会との接点を維持する方法に取り組み始めました。この取り組みを通して、私は教育現場における自分の知識の不足に気付かされました。医療側からの要望が教育現場で実現するのが難しいことや、両者の間でのバランスが取れない場合が多いということが明らかになりました。

さらに、教育現場の先生たちも医療に関する知識が不足しているということもあり、互いに互いの状況を理解せずに連携を試みると、使用する言葉が異なり、話し合いが解決に向かわないということが問題として浮かび上がりました。

ーー先生が自ら教育学部に移られたきっかけは何だったのでしょうか?

宮氏:背景には、小児科医としての経験が大きく関わっています。医療現場において教育の状況に精通した人がほとんどおらず、私はそのギャップに目を向けました。神経系の障害を持つ子供たちだけでなく、心臓病、小児癌、腎臓病など、さまざまな病気を持つ子供たちを見てきましたが、医療だけでは彼らの生活を十分にサポートすることはできませんでした。そこで、医療と教育の橋渡しをする人材の必要性を感じたのです。

その過程で、私の所属する富山医科薬科大学が富山大学に統合されたこともあり、人間発達科学部で子供の保健に関する授業を担当することになりました。この授業を通じて、人間発達科学部の教員たちとの交流が生まれ、医療と教育の連携に関心を持つ方々も現れました。その後、徐々に今いる学部との関連が深まり、公募の機会があったため、思い切って応募し、現在のポジションに就くことになりました。

意識し始めたのは2010年頃からで、その頃から徐々にこの学部との関わりを深めていきました。そして、実際にこの学部に移ることになったのは2015年です。

最初はかなりの思い切りが必要でしたが、実際に関わってみると、予想以上に大変なことも多かったです。

ーーつまり、公募に応募されたのですね?

宮氏:はい、たまたま公募があったので応募しました。私は元々小児科医で、医学部出身でしたので、教育学部への移行が受け入れられるかどうかは不確かな部分がありました。しかし、全国的に見ると、特に特別支援教育の分野に小児科医が関わる例は少しずつ見られました。そうした背景を踏まえ、「もしかしたら」という期待を持って応募しました。富山大学では恐らく初めてのケースでしょうが、他の大学の大きな教育学部では、類似の例があります。

研究での苦労について

ーーありがとうございます。次に、現在の研究で大変な部分についてお聞かせください。特に難しいと感じる点は何ですか?

宮氏:そうですね、研究に関しては、まず私自身が教育学や教員養成の分野にほとんど経験がないことが大きな課題です。私は学校現場での勤務経験がなく、学部の雰囲気も私が出身の学部とは大きく異なります。その中で自分の役割を見つけ、確立することが一つの挑戦です。

特に、学生の教育に関しては、医学部の学生を医者に育てることとは全く違うアプローチが求められます。学生たちの指導において、自分が体験した大学生活との違いを感じることも、私にとっては大きな苦労の一つです。

また、学部の学生に卒業研究や卒業論文の指導を行うことも、私にとっては新しい経験でした。医学部では卒業試験が主で、論文の執筆は大学院から始まるため、学部レベルでどこまで指導できるかについては、かなり不安がありました。

ーー教育学部には付属学校もありますが、そこで直接授業を行うこともあるのですか?

宮氏:私が子供たちに直接授業をすることはありません。現在は、特に付属の特別支援学校に関わっています。そこでは、病気や障害を持つ子供たちがおり、私はその先生たちに対して、学習指導における子供たちの特性についてのアドバイスを行う形で関わらせていただいています。

ーー富山大学には、付属の特別支援学校もあるのですね

宮氏:はい、富山大学には付属の特別支援学校の他に、付属小学校と中学校があります。これらは3つの教育機関ですね。さらに、幼稚園も設置されています。

企業との連携について

ーー話題が変わりますが、企業との連携について何か進行中のプロジェクトはありますか?

宮氏:現在、サクラパックス社との連携に関わっています。この連携は、サクラパックス社からの提案によるものです。彼らは、障害を持つ子供たちや人々に向けた商品開発や企画に取り組んでおり、これを社会貢献と授業内容の拡張の一環として進めています。

サクラパックスの企画グループのスタッフは、特別支援学校を訪れ、障害を持つ子供たちの状況を視察していました。ただ、彼らは特殊学校には行っていましたが、障害を持つ子供たちについての十分な知識がなかったため、情報提供をしてくれる人物を探していました。そこで、特殊学校の先生方から私の名前が挙がり、紹介を受けてお話をすることになりました。それが連携の始まりです。

ーーそれが、サクラパックス社との連携のきっかけとなったのですか?

宮氏:はい、その通りです。私の方からは、障害を持つ子供たちの状況や特性に関する情報を提供しました。同時に、特別支援学校が直面している困難を解決できるような商品やサービスの企画と検討を進めることになりました。

このプロジェクトには、特別支援教育を学ぶ学生たちも関わることができるかどうかという点も考慮しました。そうした学術的な指導の契約が現在進行中で、この形での連携が始まっています。

ーーそのプロジェクトでは何か製品化された成果は既にあるのでしょうか?

宮氏:実際のところ、最終的な製品化にはまだ至っていません。

プロジェクトは3年目に入っていますが、初年度と2年目には企画を行いました。しかし、商品化やサービス化するにはいくつかハードルがあり、現在はそれらの企画が保留中です。

ーー サクラパックス社はダンボール製造を行っていますね。それに関連した製品を考えているのですか?

宮氏:はい。現在、二つの試作品が進行中です。

ーーその試作されている製品はどのようなものですか?具体的に教えていただけますか?

宮氏:一つは、特別支援学校の教室で使いやすいように設計された、ダンボール製の収納ボックスです。ダンボールを使用しているため、比較的早く試作品を作ることができました。

障害を持つ子供たちは通常の教材だけでなく、様々な支援器具や教材を必要とします。これらが多種多様であり、収納スペースが不足することが問題です。教室にこれらが雑多に置かれていると、子供たちの注意を引き、授業がスムーズに進まないことがあります。これは、特別支援学校の現場での観察から得られた知見です。

カラーボックスなどの代替案も考えられましたが、置く場所の問題や怪我の危険性などがあり、実用的ではありませんでした。ダンボール素材であれば、子供たちがぶつかったり、興奮して投げたりしても怪我のリスクが低く、カラフルなデザインではなく、ダンボールそのままの色を利用することで、子供たちが気を散らすことなく集中できる収納を作れると考えました。

この試作品は現在、ある4年生の学生が卒業研究として、クラス内の子供たちの行動にどのような変化が見られるかを研究しているところです。

ーー もう一つの製品についても教えていただけますか?

宮氏:もう一つの製品は、ダンボール素材からは少し外れたものになりますが、特に知的障害を持つ子供たちが時間の理解に苦労していることに着目しています。たとえば、「休憩時間は10分です」と説明しても、実際に10分がどれくらいの長さかを理解するのは難しいですね。普通のアナログ時計を読む能力も、通常であれば小学校3、4年生くらいから身につきます。さらに、時間の計算は数字の理解に加えて、60進法や24進法を組み合わせる必要があるため、子供たちにとってはなかなか難しい問題です。

知的障害を持つ子供たちにとって時間の把握が難しいという点について、学校の先生方も課題を感じています。そこで、時間が分かりやすいタイマーの開発に取り組むことになりました。これは教員を目指す学生たちの素晴らしいアイデアでした。

通常、時計の読み方や角度の理解は高学年で学ぶ内容です。そこで、時間を個数や長さとして、より低学年向けに伝える方法を考えました。色々なタイマーを調べてみたところ、長さで時間を示すものはあまりなかったのです。最終的に学生たちが作ったのは、「はらぺこあおむし」という絵本をモチーフにしたタイマーです。これは、頭部と10個の丸で構成された芋虫のような形をしており、各丸が1分を示すように設計されました。

商品化は難しかったので、タブレットを使用し、スクラッチというプログラミングソフトを用いてタイマーを機能させるプログラムを作成しました。これを4年生の学生が、付属の特別支援学校で子供たちに使ってもらい、時間の把握や活動の切り替えが改善されるかどうかを卒業研究として行っています。

ーー非常に興味深いですね。結果が気になります。

宮氏:私自身も非常に興味があります。プロジェクトには多くの要素が絡み合っているので、結果が単純に出るものではないと思っています。しかし、学生たちが非常に面白いアイデアを出してくれたことは確かです。ただ、製品化という点に関しては、私の研究のアプローチとは異なる部分もあります。この点で、サクラパックスのスタッフが大きく関わり、実際に形にしてくれました。

企業との連携は学生にとって非常にプラスになり、これは大きな成果です。研究結果がどう出るかは別の問題ですが、困難を何か新しいもので解決する試み、そしてそれを実際の製品として形にする過程は、サクラパックス社との連携を通じて得られた大きな成果だと思います。

ーーサクラパックスのご担当者さんは存じ上げていますが、とても前向きな方という印象がありますね。

宮氏:サクラパックスは、単なるダンボールメーカーという枠組みを超えて、多様な活動に取り組んでいます。特に注目すべきは、社長自らが障害を持つ子供たちに対して非常に前向きな態度を取り、特別支援学校への深い関与を実現している点です。会社としてそのような方向性を採ることができたのは、大きな進展だと思います。彼らの活動は、特別支援学校や障害を持つ子供たちに留まらず、災害対策などの幅広い分野にも及んでいます。

ーー特別支援学校ではさまざまな種類の障害に対応していますが、それぞれの障害に合わせたデバイスや教育教材の開発にも取り組んでいらっしゃるのですか?

宮氏:教育の現場では多様な障害に対応しています。視覚障害や聴覚障害などがあり、学校の先生方は歴史的にこれらの障害に対して工夫を重ね、適切な教材や道具を作成してきました。しかし、これまで学校と企業との間には、そうした障害に対する密接な連携はあまり見られませんでした。

学校だけでは実現しにくいアイデアを、企業が関わることで具現化できる可能性があります。サクラパックスとの関係を通じて、学校の先生が思い描く教材を実現する手段が見つかるかもしれないと考えています。

今後取り組みたいこと

ーーそうですか。それでは、サクラパックスさんとの今後の連携について、どのような形を望んでいますか?例えば、取り組みたいことや、具体的なイメージやアイデアはありますか?

宮氏:そうですね。現在はまだ3年目ということもあり、実際に行動しながら、どのような方向性を目指すかを考えているところです。特に学校の先生方は、単に困難を抱えているだけでなく、その解決策を見出し、前進するための具体的なアクションをサクラパックスと共に進めていければと思っています。現在は主に学生が中心となって活動していますが、これを学校の先生方と協力して、より実効性のある形に発展させたいと考えています。

学生にとっても、この取り組みは学びの面で非常にプラスになっています。しかし、これを学生だけでなく、学校の先生方や企業と一緒に推進することで、大学、学校、企業の三者が協力する形を構築できれば、より大きな成果を得る可能性があると考えています。

ーー今回はサクラパックスさんの名前が特に挙がっていますが、他にも関心がある企業や、連携を進めたい分野はありますか?

宮氏:実は、多くの企業が学校現場との連携についてまだ模索している段階です。特に、特別支援教育だけでなく、通常の学校環境においても、さらに改善を図るために企業の参加が望まれると思っています。現在は特にICT関連が注目されていますが、これに限らず、他の分野でも企業が関与できる機会は多々あると考えています。

これまで学校は多少閉鎖的な面がありましたが、様々な企業の視点が学校に向けられるようになることで、現状の変化が期待されています。学校の先生方も多忙であり、労働改革について様々な議論がなされていますが、閉鎖性が高いために、従来のやり方を続けていることが多いと思います。サクラパックスさんはこの状況に積極的に取り組んでいます。また、私たちは他の企業との連携拡大の可能性についても検討しています。

まず、業務改善に関しては、現在一部導入されている業務システムがまだ十分に効率的ではないと思います。これらのシステムをさらに充実させることが重要だと考えています。特にIT企業がソフトウェア開発などで貢献できる部分があるでしょう。また、子供たちの安全を考慮すると、様々な見守りシステムの開発が可能だと思います。

さらに私個人としては、教育の多様な側面で改革を進める可能性があると考えています。例えば、一人一人の学習状況を把握し、具体的な支援を提供できる小型の学習支援ロボットの導入などが考えられます。

授業では先生が教えますが、個々の理解度に差が出ることもあります。そこで、各生徒に合わせた個別サポートが提供できるようなシステムがあれば、生徒一人ひとりがよりスムーズに学ぶことができるでしょう。

ーーそのサポートロボットには、人工知能が搭載されているのですか?

宮氏:そうですね。人工知能が様々なアドバイスを提供してくれると良いと思います。そのような技術が実現できれば、非常に役立つと考えています。

また富山などの地域では、人口減少に伴い小学校が小規模化しています。このような状況で、特に通学時間が長くなることを考慮すると、遠隔授業の重要性が高まっています。遠隔授業のシステムは現在まだ使いにくさがあり、子供たちにも教員にも困難を与えています。これを解決し、より使いやすく効果的なシステムを構築することが求められています。

小規模校では多くの教員を配置することが難しいため、特定の科目に強い教員が遠隔で授業を行い、現地の教員がサポートする形が効果的です。これにより、少人数であっても質の高い教育が提供できるでしょう。

この実現のためには、子供たちや教員にとって使いやすいシステムや機器の導入が重要です。現在はテレビ会議システムを使ったリモート授業が行われていますが、これをさらに発展させる必要があります。

ーーVR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(混合現実)のような技術が、教育の現場で有用になってきますね。

宮氏:そうですね。現在のシステムでは、これらの技術を使いたいと思っても、教員が同時に多くの複雑な操作を行わなければならない状況です。もし、ボタン一つで簡単に操作できるようなシステムがあれば、より多くの人がこれらの技術を利用し、その効果を実感できるようになるでしょう。

今後の時代において、学校や教育分野で必要とされる技術はさらに多くなると思います。

ーー他に研究として取り組みたいことがあれば、教えていただけますか?

宮氏:実は、実現したい研究のアイデアは多数あります。ただ、それらを実現するにはまだ十分なリソースと時間が必要です。

特に、行動解析に関して興味を持っています。AIの普及に伴い、人々の行動を映像から分析する技術が進化してきています。この技術を学校の教室に応用し、子供たちの行動を解析することで、どのような授業や関わり方が子供たちの集中力や学習効果を高めるかを調べたいと考えています。

ーーデータサイエンスと行動分析の技術が今後どのように実用化されると思いますか?

宮氏:現在、金沢と富山の学生を対象に共同教育課程を実施していますが、金沢の学生が授業にどれだけ集中しているか、興味を持って聞いているかを把握するのは難しいです。たとえば、金沢大学の教室にカメラを設置して、授業中に学生がどのように反応しているかを視覚的に捉えることができれば、授業の進行や方法をより効果的に調整できると思います。例えば、学生の顔の向きや表情を分析し、そのデータをリアルタイムで教員に提供するシステムなどがあれば、教育の質をさらに向上させることができます。

また、遠隔地にいる学生が質問する際に、カメラが自動的にその学生にフォーカスし、声を拾う機能もあれば、よりスムーズな教育過程が実現できると思います。

若い研究者へのアドバイス

ーーありがとうございます。最後に、産学連携研究を行う若い研究者へのアドバイスがあれば教えてください。

宮氏:特に、一人で研究を行っている方々にとっては、大学内での協力者がすぐに見つからない場合、企業が共同研究において大きな助けとなることが多いと思います。社会とのつながりを広げることにより、新たな研究の可能性が開かれるでしょう。産学連携本部では、このような研究者のサポートに積極的に関わっています。大学側からも積極的に社会とのつながりを持つことが重要です。

私自身、最初は企業との直接的なつながりはありませんでしたが、大学外の研修会などに参加することで、徐々に知名度を上げ、サクラパックスさんとのつながりを築くことができました。大学内に留まるだけでは、新たな関係を築くのは難しいです。特に教育分野では、学校との関係を強化することが、企業とのつながりを生むきっかけになることもあります。これは、まるで理想的な夢のような話ですがね。

ーーすべてが現実になるわけではありませんが、夢に向かって努力を続けることが重要だと思います。

宮氏:実はもう一つ、挑戦したいことがあります。これは研究として取り組むには難しい分野ですが、私が小児科医としての経験を活かして、教員を養成する役割を担うことです。これから卒業する学生が質の高い教員になるかどうかは、私にとって非常に重要なテーマです。その成果をどのように示すかは難しいですが、異分野からの経験を活かして、教員を目指す学生が力をつけ、卒業していけば、それだけで私の目標は達成されたと感じます。

ーーインタビューはこれで終了とさせていただきます。今日はありがとうございました。