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科学協会メールマガジン「科学BiYoRi 2017年4月号」 大隅良典栄誉教授からのメッセージ

2017/04/21 (Fri) 13:00
XXXX様
XXXX

こんにちは。
日本科学協会から発信するメールマガジン「科学BiYoRi」をお送りいたします。

※本メールマガジンは、日本科学協会の事業に参加された方、名刺を交換させていただいた方等にお送りしています。

 4月21日開催の研究奨励の会にて、2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞いたしました大隅良典栄誉教授より、笹川科学研究助成を受けられる若い研究者へのメッセージをいただきましたので、ご紹介いたします。 

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 こんにちは、東京工業大学の大隅といいます。

 今日は若い皆さんに、私が日頃感じてることを、少しお話をさせていただこうと思います。

 私は戦争の終わる半年ぐらい前に生まれたので、あなたたちとほぼ半世紀ぐらいの年代差がありますが、私は科学者になりたいと、小さい頃から思ってたところもあるんですけど、こうして、もう40年近く研究を続けてきました。

 いろんな人の出会いがあって今日があるということを、折に触れて思っています。

 若い人にぜひ考えてほしいことは、科学なり、研究なるものは、とっても社会的な存在だということで、個人的な作業に見えることはたくさんあるんですけど、自分たちが何をやりたいっていうことを考えるのも、培われてきた長い人間の歴史の中にあって、私が例えば、酵母を研究材料に使ったということも、タンパク質の分解に興味を持ったのも、ある種の必然性があったんだと思っています。

 自分がどういう時代に生きてるかということを、少し振り返りながら生活をしてみるということ、そういう時間をもってくれると、とってもいいなと思っています。

 私は、去年の暮れ以来、いろんなところで、いろんな話をさせていただく機会がありました。

 その一つで、私がずっと強調してきたことは、今の時代とても情報があるって言うことも含めて、なかなか人と違うことをやるというのは、難しいような時代になってきていると思っています。

 研究の楽しさとは、自分が初めて見つけたかもしれないって言うワクワク感のようなものが、ひとつの大切な原動力です。

 今日本の若者の中でやっぱり皆がやっているところに、自分も入りたいという行動様式は、私達の時代よりも、もっと強くなってきてるような気がしています。

 私は流行りのことはやるなということを、常々いろんなところで発言をしてるんですけど、その真意は、流行りのことは、今流行りだし、たくさんの人がやっている。

 そうではなく、もっと自然にはたくさんの謎があるということも含めてですね、面白いことにチャレンジしてくれるっていうことを、大事に思ってほしいなと思っています。

 それともう一つ、私は新聞の報道かなんかで、色んな所で読む機会があったかもしれませんけど、もう一つ私が言っているのは、役に立つという言葉です。

 もちろん、皆役に立ちたいと、人間誰しも思いますが、若者がいう役に立つというのは、何か、就職のためのキーワードみたいな感じで、皆さん気軽に役に立つということを口にするような気がしてなりません。

 役に立つとは一体なんだろうということを、少し考えてみてほしいなと思います。

 本当にその人類の役に立つということは、1、2年で計れるものではありませんので、役に立つということは、2年後に自分の仕事が製品になったとか、そういうことでは決してないんだと思います。

 もっと私たち、ゆとりを持って自分の世代それから次の世代、ひいては地球上の歴史の中で、これが本当に役に立つというような、すごく長い視点で考えるというような、そういう心のゆとりを持ってほしいなと思っております。

 それが日本の社会が、いろんなことをじっくり考えて前に進んでいく大きな力になるんじゃないかなと思っています。
 
 それが私の皆さんに伝えたい、役に立つということを一生懸命考えれば、いずれ大事な真理として、人間の役に立つんだと、行動してもらえたらいいなと、思っております。


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