★ぴあサポメルマガ6月号★合理的配慮を知ってますか?その1
2020/06/22 (Mon) 08:57
☆★☆―――――――――――――――
合理的配慮を知ってますか?その1
―――――★ぴあサポメルマガ6月号★
◇◆◇――――――――
差別解消のための合理的配慮ってなんだろう?
―――――――――◆◇◆
突然ですが、みなさんは東京大学で困った時に相談できる場所をいくつご存知でしょうか?東大の学生であれば、学生相談所、コミュニケーション・サポートルーム等々、目的に応じて色々な機関を利用することができます。実は、こうした機関(正確にはその一部ですが)が東大に設置されている根拠の一つとして、「高等教育機関での学生に対する合理的配慮」という法律の言葉があります。この「合理的」という言葉は、なんとも頼り甲斐があるような、それでいてなんだか都合がいいような、漠然とした聞こえがあると思いませんか?
私たちに支援を届ける機関の背後に、いったいどんな考え方があるのか、法律の観点から解き明かしていきましょう。これから3回の連載で高等教育機関での学生に対する合理的配慮について、考えていきたいと思います。ぜひ興味を持っていただければ幸いです。
今回は「合理的配慮」とはどのようなものなのかを、法律の趣旨や目的から考えたいと思います。
また、そこで、障害についての「社会モデル」についても、皆さんに知っていただきたいと思います。
1 合理的配慮を考えるきっかけ
私たちピアサポートルームは、「相談機関ガイド」と題して学内の相談機関の職員さんにインタビューを行っています。その一つ、コミュニケーション・サポートルームのインタビュー記事(https://ut-psr.net/counselingguide/communication/ 最終アクセス2020年6月7日)を作成するにあたり、障害者差別解消法における合理的配慮という言葉が出てきたので、高等教育機関では、障害のある学生に対して、どのような合理的配慮が必要になるか、考えてみることにしました。
合理的配慮とはなんなのか、抽象的であり、わかりづらいですよね。配慮が不足すると、学生が十分に学修・研究が行えなくなってしまうという不利益が生じてしまうことは容易に想像できます。他方で、配慮が過剰であると、大学に過重な負荷がかかってしまったり、逆差別(ここでは、障害のない人が障害のある人に対する配慮の結果として、反射的に不利益を被ることと定義することにします)の問題が生じたりすることも考えられます。それらについて検討してみるにあたり、まず、障害者差別解消法の趣旨・目的にさかのぼって、そこでいう合理的配慮の意義について検討してみます。
2 合理的配慮とは?
障害者差別解消法の目的は、すべての人が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向けて、障害者差別の解消を推進することです。ここでいう障害とは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害のことをいいます。
この法律の考え方の根本には、障害に対するいわゆる「社会モデル」という考え方があります。まず、「社会モデル」という考え方の前には、障害のある人が日常生活や社会生活に制限を受ける原因を個人の心身の機能に求める「医学モデル」という考え方を中心として、立法や行政が行われていました。
「社会モデル」とは、「医学モデル」とは違い、障害のある人が日常生活や社会生活に制限を受ける原因を社会の構造に原因があるとみる考え方のことです。この考え方では、社会は障壁を取り払って誰もが参加できる平等な社会を作る義務があることになります。なぜならば、既存の社会が障害のある人の日常生活や社会生活に制限をもたらすような社会障壁を作っているために、障害のある人がさまざまな制限を受けているからです。そのため、同法は、行政機関等(7条)や事業者(8条)に不当な差別的取扱いを禁止し、合理的配慮を提供することを要求しています。東京大学は、国立大学法人ですから「行政機関等」にあたります(2条5号ロ)。
同法7条2項にいう合理的配慮とは、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をすることです。
ここでいう社会的障壁とは、前述の社会モデルから導かれるように、障害のある人にとって、日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいいます。いわゆる、「バリア」のことです。なお、意思の表明については、本質的な要件ではないと考えられています。また、過重な負担は、行政機関等が自らの義務を免れる事由として、客観的根拠をもって証明すべき事項であると考えられています。たやすく過重な負荷であることを認めてしまうと、既存社会にある様々な障壁はそのままにされてしまい、法の目的が達成されないことになるからです。
3 まとめ
今回は、合理的配慮という言葉の記載元である、「障害者差別解消法」について説明しました。障害のある人にとっての障壁を取り払うため、大学などの行政機関は「必要かつ合理的な配慮」を求められています。次回は、実際に高等教育機関でどのような「合理的配慮」が求められているのか、及び東大ではどのような取り組みを行っているのかについて説明します。お楽しみに!
【筆者紹介】
法学政治学研究科法曹養成専攻2年。社会人経験を経て法科大学院に入学して法的・経済的問題に直面して困っている人に対してアウトリーチ的にアプローチしていくことができる弁護士になることを目標に日々学修をしています。
【ピアサポートルームのWebサイト/Twitterの紹介】
活動カレンダーや活動内容が載っています。ぜひアクセス&フォローしてください!
☆Webサイト:http://ut-psr.net/
☆Twitter:@utpsr
【ご意見、ご感想をお待ちしています】
みなさまの声をお待ちしております。
https://forms.gle/Su1pyVkCqhmyYZRt8 までご意見ご感想をどしどしお寄せください
+++―――――――――――――――――――+++
東京大学相談支援研究開発センターピアサポートルーム
[WEB] http://dcs.adm.u-tokyo.ac.jp/psr/
[学生の作るWEBサイト] http://ut-psr.net/
[Email] mail@utpsr.net [Tel] 080-9410-0093
+++―――――――――――――――――――+++
合理的配慮を知ってますか?その1
―――――★ぴあサポメルマガ6月号★
◇◆◇――――――――
差別解消のための合理的配慮ってなんだろう?
―――――――――◆◇◆
突然ですが、みなさんは東京大学で困った時に相談できる場所をいくつご存知でしょうか?東大の学生であれば、学生相談所、コミュニケーション・サポートルーム等々、目的に応じて色々な機関を利用することができます。実は、こうした機関(正確にはその一部ですが)が東大に設置されている根拠の一つとして、「高等教育機関での学生に対する合理的配慮」という法律の言葉があります。この「合理的」という言葉は、なんとも頼り甲斐があるような、それでいてなんだか都合がいいような、漠然とした聞こえがあると思いませんか?
私たちに支援を届ける機関の背後に、いったいどんな考え方があるのか、法律の観点から解き明かしていきましょう。これから3回の連載で高等教育機関での学生に対する合理的配慮について、考えていきたいと思います。ぜひ興味を持っていただければ幸いです。
今回は「合理的配慮」とはどのようなものなのかを、法律の趣旨や目的から考えたいと思います。
また、そこで、障害についての「社会モデル」についても、皆さんに知っていただきたいと思います。
1 合理的配慮を考えるきっかけ
私たちピアサポートルームは、「相談機関ガイド」と題して学内の相談機関の職員さんにインタビューを行っています。その一つ、コミュニケーション・サポートルームのインタビュー記事(https://ut-psr.net/counselingguide/communication/ 最終アクセス2020年6月7日)を作成するにあたり、障害者差別解消法における合理的配慮という言葉が出てきたので、高等教育機関では、障害のある学生に対して、どのような合理的配慮が必要になるか、考えてみることにしました。
合理的配慮とはなんなのか、抽象的であり、わかりづらいですよね。配慮が不足すると、学生が十分に学修・研究が行えなくなってしまうという不利益が生じてしまうことは容易に想像できます。他方で、配慮が過剰であると、大学に過重な負荷がかかってしまったり、逆差別(ここでは、障害のない人が障害のある人に対する配慮の結果として、反射的に不利益を被ることと定義することにします)の問題が生じたりすることも考えられます。それらについて検討してみるにあたり、まず、障害者差別解消法の趣旨・目的にさかのぼって、そこでいう合理的配慮の意義について検討してみます。
2 合理的配慮とは?
障害者差別解消法の目的は、すべての人が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向けて、障害者差別の解消を推進することです。ここでいう障害とは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害のことをいいます。
この法律の考え方の根本には、障害に対するいわゆる「社会モデル」という考え方があります。まず、「社会モデル」という考え方の前には、障害のある人が日常生活や社会生活に制限を受ける原因を個人の心身の機能に求める「医学モデル」という考え方を中心として、立法や行政が行われていました。
「社会モデル」とは、「医学モデル」とは違い、障害のある人が日常生活や社会生活に制限を受ける原因を社会の構造に原因があるとみる考え方のことです。この考え方では、社会は障壁を取り払って誰もが参加できる平等な社会を作る義務があることになります。なぜならば、既存の社会が障害のある人の日常生活や社会生活に制限をもたらすような社会障壁を作っているために、障害のある人がさまざまな制限を受けているからです。そのため、同法は、行政機関等(7条)や事業者(8条)に不当な差別的取扱いを禁止し、合理的配慮を提供することを要求しています。東京大学は、国立大学法人ですから「行政機関等」にあたります(2条5号ロ)。
同法7条2項にいう合理的配慮とは、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をすることです。
ここでいう社会的障壁とは、前述の社会モデルから導かれるように、障害のある人にとって、日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいいます。いわゆる、「バリア」のことです。なお、意思の表明については、本質的な要件ではないと考えられています。また、過重な負担は、行政機関等が自らの義務を免れる事由として、客観的根拠をもって証明すべき事項であると考えられています。たやすく過重な負荷であることを認めてしまうと、既存社会にある様々な障壁はそのままにされてしまい、法の目的が達成されないことになるからです。
3 まとめ
今回は、合理的配慮という言葉の記載元である、「障害者差別解消法」について説明しました。障害のある人にとっての障壁を取り払うため、大学などの行政機関は「必要かつ合理的な配慮」を求められています。次回は、実際に高等教育機関でどのような「合理的配慮」が求められているのか、及び東大ではどのような取り組みを行っているのかについて説明します。お楽しみに!
【筆者紹介】
法学政治学研究科法曹養成専攻2年。社会人経験を経て法科大学院に入学して法的・経済的問題に直面して困っている人に対してアウトリーチ的にアプローチしていくことができる弁護士になることを目標に日々学修をしています。
【ピアサポートルームのWebサイト/Twitterの紹介】
活動カレンダーや活動内容が載っています。ぜひアクセス&フォローしてください!
☆Webサイト:http://ut-psr.net/
☆Twitter:@utpsr
【ご意見、ご感想をお待ちしています】
みなさまの声をお待ちしております。
https://forms.gle/Su1pyVkCqhmyYZRt8 までご意見ご感想をどしどしお寄せください
+++―――――――――――――――――――+++
東京大学相談支援研究開発センターピアサポートルーム
[WEB] http://dcs.adm.u-tokyo.ac.jp/psr/
[学生の作るWEBサイト] http://ut-psr.net/
[Email] mail@utpsr.net [Tel] 080-9410-0093
+++―――――――――――――――――――+++