★ぴあサポメルマガ7月号★合理的配慮を知ってますか?その2
2020/07/07 (Tue) 10:34
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合理的配慮を知ってますか?その2
―――――★ぴあサポメルマガ7月号★
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合理的配慮を知ってますか?その2
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前回のメルマガでは、障害者差別解消法における合理的配慮の意義について考えました。今回のメルマガでは、高等教育機関において求められる合理的配慮について、具体例とともに検討していきます。
高等教育機関であるからこそもとめられる「合理的配慮」とはどういうものでしょうか。
日本国憲法上の要請である、平等原則や学問の自由を尊重する観点から、高等教育機関では、障害のある学生であっても、平等に学修・研究を行う権利が保障されるべきだといえます。そのような観点から、文部科学省がガイドラインとして合理的配慮の基本的な指針を整理しています。
また、東京大学においても、そのガイドラインを参考にしながら、様々な合理的配慮の準備がなされています。具体例として、東京大学バリアフリー支援室で提供している合理的配慮について、例示してみます。
1 合理的配慮の基本的な指針
東京大学をはじめとした高等教育機関では、学生に対して、具体的にどのような合理的配慮が求められているでしょうか。
文部科学省のガイドライン(https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/04/11/1339465_0100.pdf
最終アクセス2020年7月3日)では、指針とすべき考え方について、以下のように整理されています。
(1)機会の確保
障害を理由として就学を断念することがないよう、就学機会を確保すること、また、高い教養と専門的能力を培えるよう、教育の質を維持すること。
(2)情報公開
障害のある大学進学希望者や学内の障害のある学生に対し、大学等全体として、受け入れ姿勢・方針を示すこと。
(3)決定過程
権利の主体が学生本人であることを踏まえ、学生本人の要望に基づいた決定や調整を行うこと。
(4)教育方法等
情報保障、コミュニケーション上の配慮、公平な試験、成績評価などにおける配慮を行うこと。
(5)支援体制
大学等全体として専門性のある支援体制の確保に努めること。
(6)施設・設備
安全かつ円滑に学生生活を送れるよう、バリアフリー化に配慮すること。
なお、ここで示した項目以外は合理的配慮として提供する必要がないというものではなく、個々の学生の障害の状態・特性や教育的ニーズ等に応じて配慮されることが望まれます。
これらの項目があげられるのは(a)社会的障壁を排除し、(b)障害のある学生であっても、平等に学修・研究を行う権利(憲法13条、14条、23条)を保障するのに欠かせないからであると考えられます。
2 東京大学での合理的配慮例
東京大学での合理的配慮の具体例について、発達障害・精神障害に着目して、(バリアフリー支援室で行っていることを例に)ごく一部をご紹介します。より詳しく知りたい方は、東京大学バリアフリー支援室のHP、
(http://ds.adm.u-tokyo.ac.jp/)
を御覧ください。以下、バリアフリー支援室HPからの抜粋です。
(1)すべての障害に共通の支援
・支援に関する相談
部局の支援実施担当者およびバリアフリー支援室のコーディネーターが随時相談に応じます。
・授業担当教員との連絡・調整
授業時に配慮が必要な事項については事前に打ち合わせを行い、部局の支援実施担当者から授業担当教員へ伝達します。内容によっては、授業担当教員を交えて面談を行う場合もあります。
・定期試験時に配慮すべき事項の調整
試験時間の延長や別室受験、注意事項の文書伝達など、定期試験時に配慮が必要な事項について事前に打ち合わせ、部局の支援実施担当者が調整します。
・支援機器に関する情報提供、支援機器の貸与
・学内施設の改善
障害のある学生の要望を受け、必要な施設改善のための調整を行います。バリアフリー支援室では、定期的にバリアチェックを行い、全学的なバリアフリー化に努めています。
・教室での座席位置の確保
授業教室内で優先席の確保が必要な場合には、部局の支援実施担当者が中心となって手配を行います。
・学生宿舎のバリアフリー化への対応
バリアフリー対応の居室を備えた学生宿舎があります。
(2)発達障害・精神障害特有の支援
・ 評価の代替
筆記試験あるいはレポート等、授業で決まっている評価方法では、十分に能力を発揮することができないときには、他の評価方法への変更を検討します 。
・提出期限延長
期限内に課題を終了させることが難しいときには、提出期限の延長を検討します。
・退室、再入室の許可
授業・試験の終了まで同じ部屋に居続けることが困難なときには、授業・試験中の途中退室を認めることを検討します。また、再入室については条件が整えば認めます。
・講義・実習の代替
授業で決まっている方法(例えば集団)で講義・実習等に参加することが難しいとき には、他の参加方法(例えば個別)への変更を検討します。
・視覚呈示を増やした教育環境
講義を聴いてもよくわからないときには、視覚教材を確保する、あるいは視覚的な情報伝達を増やすように調整することを検討します。
・教示方法の調整
多数の情報を整理しながら、自分で見通しをつけて課題を実行することが難しいときには、教職員が教示方法を調整することを検討します。教示方法の調整には具体的な教示、事前の教示、見本の提示や課題の細分化などが含まれます。
・ティーチングアシスタント又はサポートスタッフの配置
教示方法の調整、視覚呈示を利用した教育環境等に関して、担当教職員の時間が足りないときには、ティーチングアシスタント又はサポートスタッフの配置について検討します。
・進捗管理の補助
優先順位をつけて課題を実行することが難しく、課題が終わらないときには、教職員が進捗管理を補助することを検討します。
・コミュニケーションの補助
教職員に自分の意思を十分伝えられない、相手の意図がわからないときには、専門家が本人と教職員の意思疎通を仲介することを認めます。
・耳栓等の使用許可
感覚過敏のために、集中することが難しく、授業・試験中に課題を終わらせられないときには、耳栓など感覚入力を調整する補助具の使用を許可します。
・情報保障
板書を注視することが難しくて、講義内容・試験時の注意事項がわからないなど必要な情報が得られないときには、板書内容の書写、視覚教材の配付、口頭での伝達などの手法で必要な情報を保障することを検討します。
・身体機能の障害に準じた配慮
精神障害あるいは薬物療法の副作用のために、身体機能の障害が生じていて、授業・試験で困っているときには、身体機能の障害に準じた配慮の提供を検討します。
3 まとめ
今回は、高等教育機関に求められる合理的配慮の内容と、東大で実際に行われている支援の一例についてお伝えしました。
みなさん自身が利用される際にはもちろん、周りの人が何か学生生活で困っている時には、こうした支援が東大にもあるということを思い返してもらうと良いかもしれないですね。
なお、同じ障害名であっても、人によって困っている内容や置かれている状況等は様々で、社会的障壁となるものも人それぞれです。そのため、学内の専門家と相談しながら自分に合った支援を検討していくことが大切だといわれています。
次回は、配慮する側に過度な負担にはならないのか、逆差別の問題は生じないのかといった、「合理的配慮」についてありがちな疑問を考えていきます。
【筆者紹介】
法学政治学研究科法曹養成専攻2年。社会人経験を経て法科大学院に入学して法的・経済的問題に直面して困っている人に対してアウトリーチ的にアプローチしていくことができる弁護士になることを目標に日々学修をしています。
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東京大学相談支援研究開発センターピアサポートルーム
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[学生の作るWEBサイト] http://ut-psr.net/
[Email] mail@utpsr.net [Tel] 080-9410-0093
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前回のメルマガでは、障害者差別解消法における合理的配慮の意義について考えました。今回のメルマガでは、高等教育機関において求められる合理的配慮について、具体例とともに検討していきます。
高等教育機関であるからこそもとめられる「合理的配慮」とはどういうものでしょうか。
日本国憲法上の要請である、平等原則や学問の自由を尊重する観点から、高等教育機関では、障害のある学生であっても、平等に学修・研究を行う権利が保障されるべきだといえます。そのような観点から、文部科学省がガイドラインとして合理的配慮の基本的な指針を整理しています。
また、東京大学においても、そのガイドラインを参考にしながら、様々な合理的配慮の準備がなされています。具体例として、東京大学バリアフリー支援室で提供している合理的配慮について、例示してみます。
1 合理的配慮の基本的な指針
東京大学をはじめとした高等教育機関では、学生に対して、具体的にどのような合理的配慮が求められているでしょうか。
文部科学省のガイドライン(https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/04/11/1339465_0100.pdf
最終アクセス2020年7月3日)では、指針とすべき考え方について、以下のように整理されています。
(1)機会の確保
障害を理由として就学を断念することがないよう、就学機会を確保すること、また、高い教養と専門的能力を培えるよう、教育の質を維持すること。
(2)情報公開
障害のある大学進学希望者や学内の障害のある学生に対し、大学等全体として、受け入れ姿勢・方針を示すこと。
(3)決定過程
権利の主体が学生本人であることを踏まえ、学生本人の要望に基づいた決定や調整を行うこと。
(4)教育方法等
情報保障、コミュニケーション上の配慮、公平な試験、成績評価などにおける配慮を行うこと。
(5)支援体制
大学等全体として専門性のある支援体制の確保に努めること。
(6)施設・設備
安全かつ円滑に学生生活を送れるよう、バリアフリー化に配慮すること。
なお、ここで示した項目以外は合理的配慮として提供する必要がないというものではなく、個々の学生の障害の状態・特性や教育的ニーズ等に応じて配慮されることが望まれます。
これらの項目があげられるのは(a)社会的障壁を排除し、(b)障害のある学生であっても、平等に学修・研究を行う権利(憲法13条、14条、23条)を保障するのに欠かせないからであると考えられます。
2 東京大学での合理的配慮例
東京大学での合理的配慮の具体例について、発達障害・精神障害に着目して、(バリアフリー支援室で行っていることを例に)ごく一部をご紹介します。より詳しく知りたい方は、東京大学バリアフリー支援室のHP、
(http://ds.adm.u-tokyo.ac.jp/)
を御覧ください。以下、バリアフリー支援室HPからの抜粋です。
(1)すべての障害に共通の支援
・支援に関する相談
部局の支援実施担当者およびバリアフリー支援室のコーディネーターが随時相談に応じます。
・授業担当教員との連絡・調整
授業時に配慮が必要な事項については事前に打ち合わせを行い、部局の支援実施担当者から授業担当教員へ伝達します。内容によっては、授業担当教員を交えて面談を行う場合もあります。
・定期試験時に配慮すべき事項の調整
試験時間の延長や別室受験、注意事項の文書伝達など、定期試験時に配慮が必要な事項について事前に打ち合わせ、部局の支援実施担当者が調整します。
・支援機器に関する情報提供、支援機器の貸与
・学内施設の改善
障害のある学生の要望を受け、必要な施設改善のための調整を行います。バリアフリー支援室では、定期的にバリアチェックを行い、全学的なバリアフリー化に努めています。
・教室での座席位置の確保
授業教室内で優先席の確保が必要な場合には、部局の支援実施担当者が中心となって手配を行います。
・学生宿舎のバリアフリー化への対応
バリアフリー対応の居室を備えた学生宿舎があります。
(2)発達障害・精神障害特有の支援
・ 評価の代替
筆記試験あるいはレポート等、授業で決まっている評価方法では、十分に能力を発揮することができないときには、他の評価方法への変更を検討します 。
・提出期限延長
期限内に課題を終了させることが難しいときには、提出期限の延長を検討します。
・退室、再入室の許可
授業・試験の終了まで同じ部屋に居続けることが困難なときには、授業・試験中の途中退室を認めることを検討します。また、再入室については条件が整えば認めます。
・講義・実習の代替
授業で決まっている方法(例えば集団)で講義・実習等に参加することが難しいとき には、他の参加方法(例えば個別)への変更を検討します。
・視覚呈示を増やした教育環境
講義を聴いてもよくわからないときには、視覚教材を確保する、あるいは視覚的な情報伝達を増やすように調整することを検討します。
・教示方法の調整
多数の情報を整理しながら、自分で見通しをつけて課題を実行することが難しいときには、教職員が教示方法を調整することを検討します。教示方法の調整には具体的な教示、事前の教示、見本の提示や課題の細分化などが含まれます。
・ティーチングアシスタント又はサポートスタッフの配置
教示方法の調整、視覚呈示を利用した教育環境等に関して、担当教職員の時間が足りないときには、ティーチングアシスタント又はサポートスタッフの配置について検討します。
・進捗管理の補助
優先順位をつけて課題を実行することが難しく、課題が終わらないときには、教職員が進捗管理を補助することを検討します。
・コミュニケーションの補助
教職員に自分の意思を十分伝えられない、相手の意図がわからないときには、専門家が本人と教職員の意思疎通を仲介することを認めます。
・耳栓等の使用許可
感覚過敏のために、集中することが難しく、授業・試験中に課題を終わらせられないときには、耳栓など感覚入力を調整する補助具の使用を許可します。
・情報保障
板書を注視することが難しくて、講義内容・試験時の注意事項がわからないなど必要な情報が得られないときには、板書内容の書写、視覚教材の配付、口頭での伝達などの手法で必要な情報を保障することを検討します。
・身体機能の障害に準じた配慮
精神障害あるいは薬物療法の副作用のために、身体機能の障害が生じていて、授業・試験で困っているときには、身体機能の障害に準じた配慮の提供を検討します。
3 まとめ
今回は、高等教育機関に求められる合理的配慮の内容と、東大で実際に行われている支援の一例についてお伝えしました。
みなさん自身が利用される際にはもちろん、周りの人が何か学生生活で困っている時には、こうした支援が東大にもあるということを思い返してもらうと良いかもしれないですね。
なお、同じ障害名であっても、人によって困っている内容や置かれている状況等は様々で、社会的障壁となるものも人それぞれです。そのため、学内の専門家と相談しながら自分に合った支援を検討していくことが大切だといわれています。
次回は、配慮する側に過度な負担にはならないのか、逆差別の問題は生じないのかといった、「合理的配慮」についてありがちな疑問を考えていきます。
【筆者紹介】
法学政治学研究科法曹養成専攻2年。社会人経験を経て法科大学院に入学して法的・経済的問題に直面して困っている人に対してアウトリーチ的にアプローチしていくことができる弁護士になることを目標に日々学修をしています。
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