「コーチング」に学ぶ後輩との接し方
2020/02/21 (Fri) 18:28
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「コーチング」に学ぶ後輩との接し方
――――――――★ぴあサポメルマガ2月号★
こんにちは。寒さもピークを過ぎ、春に向かって暖かくなっていく時期ですね。ところで、春になるとサークルや研究室に新しいメンバーが加わり、多くの方が“先輩”になると思います。そこで今月は、後輩のマネジメントや指導育成、コミュニケーションに関わる「コーチング」について紹介したいと思います。これを機に後輩との接し方を見直してみませんか?
■目次■
1. コーチングとは
2. 傾聴・質問・承認
3. 実践とGROWモデル
4. さいごに
◇◆◇――――――――
1. コーチングとは
――――――――◆◇◆
まずコーチングとは何か。それは、コミュニケーションを通じて相手の気づきを促し、相手の内側にある答えやアイディアを引き出すことです。また相手が自ら考えて行動することを促し、やる気や責任感を引き出すことでもあります。コーチングは個別のアプローチで相手の可能性や自発性を引き出すという点で、教師や上司が一方向的にかつ画一的に知識や指示を伝達するティーチングや従来のマネジメントとは、一線を画していると言えます。
またコーチングはどのような場面で有効か。もちろんティーチングや従来のマネジメントが必要な場面もありますが、例えば学生団体で新たな企画に挑戦する場面や未知のものを探求する研究という場面では、先輩自身も答えがわからないため、後輩の考えや積極的な協力を引き出す必要があります。またサークルや部活動でも、試合等で臨機応変に対応できる後輩を育成し、チーム全体の士気やパフォーマンスを高めるのに有効です。
◇◆◇――――――――
2. 傾聴・質問・承認
――――――――◆◇◆
続いて、コーチングにおいて重要な3つのスキルを説明します。
(1) 傾聴
相手の話に最後まで耳を傾ける姿勢は、相手のアイディアや前向きな意欲を尊重し、相手に気持ちや考えの整理をしてもらうために重要です。たとえ忙しかったとしても、作業をしながらであったり話の途中で解決策や自分の解釈をはさんだりせずに、相手の話を全面的に受けとめる姿勢を心がけることが重要です。以下、具体的なスキルを挙げます。
・ハの字や90度の角度で向かい合う:対面では緊張感が高いため、相手に安心して話してもらえる環境を整えることが必要です。
・相手の話のペースに合わせてあいづちやうなずきを行う:相手の話すスピードや声の大きさ、トーンに合わせることで共感が伝わり、親密な関係を築くことができます。
・オウム返し:相手の話のポイントとなる言葉を繰り返すことで、話を聞いてくれていると安心でき、また自分の内面を客観的に捉え直すこともでき気持ちや考えの整理が促されます。
(2) 質問
指示や命令に頼らずに相手の自発性を引き出したい場合や、悩みや目標のように自分からは話しにくいことを引き出したい場合には、質問が有効です。また質問には、共に活動する仲間として相手を尊重しているということを伝える効果もあります。質問には大きく分けて二つの種類があり、一つは、YESかNOで答える「クローズド・クエスチョン」です。簡単に回答できるのが利点で、YESまたはNOを想定した念押しの質問(~ですね?)を適切に活用することで、相手の責任感や意欲を引き出すこともできます。もう一つは、自由に回答できる「オープン・クエスチョン」で、相手のアイディアや気持ちを引き出すことができます。ただし、質問が抽象的で漠然としがちなため、相手にとって答えやすい形で質問する工夫が必要です。例えば、理由やアイディアを“3つ”挙げてもらったり、選択肢を用意したり、パーセントや点数で答えさせたりすると良いでしょう。
(3) 承認
相手の考えや意欲を引き出し積極的な行動を促すためには、相手の考えや意欲を褒めて認めることが重要です。承認するためには、まず相手のことをよく観察する必要があります。わかりやすい結果だけでなく、プロセスやフォローなど日々の行動に細かく注目すると良いでしょう。そして観察したことを相手に伝えることで承認は成立します。観察して感じたことや思ったことを素直に伝えましょう。また叱らなければいけない場合には、感情的に“怒る”のではなく、観察した事実を理性的に伝える必要があります。言いにくい場合は、予め伝える宣言(今から私が感じたことを話しますよなど) をして、相手に心の準備をしてもらうと良いでしょう。
◇◆◇――――――――
3. 実践とGROWモデル
――――――――◆◇◆
実際にコーチングをするときには、「GROWモデル」というガイドラインが有効です。以下、部活動の後輩に対してコーチングを行う例で説明します。
まず後輩が達成したい目標“Goals”(試合で○○大学に勝つ)を引き出し共有します。次に後輩の置かれている現状“Reality”(前の試合ではディフェンスが甘く20点差で負けてしまった)を把握し、目標達成のための選択肢“Options”(ディフェンスの練習を中心に行う、ディフェンスの上手な○○先輩に教えてもらうなど)を数多く引き出し一緒に戦略を考えます。最後に後輩の意志“Will”を確認し、実際の行動(練習計画を立てさせるなど)へと結びつけます。
実際に後輩に接する場面で困ったときは、このモデルに沿って話を進めてみてください。
◇◆◇――――――――
4. さいごに
――――――――◆◇◆
いかがでしょうか。コーチングはものすごいスキルではなく、日々の実践で状況が少しずつ良くなっていくようなささやかなスキルだと思います。またスキルにだけ着目するのではなく、相手の可能性に対して信頼と期待を持ってサポートするという姿勢が重要だと思います。コーチングを通じて、皆さんがより良い人間関係や組織を築ければと思っています。
より詳細なスキルや実例を知りたいと思った方は、下記の書籍や参考文献を読んでみてください。
榎本英剛著(1999)『部下を伸ばすコーチング:「命令型マネジメント」から「質問型マネジメント」へ』PHP研究所.
上村光弼著(2002)『最強リーダーのパーフェクト・コーチング:部下のこころに火をつける9つの法則』PHP研究所.
【参考文献】
本間正人,松瀬理保著(2006)『コーチング入門』日本経済新聞出版社.
本山雅英著(2014)『大学生のためのコーチングとファシリテーションの心理学』北大路書房.
【筆者紹介】
工学研究科M2。
4月から社会人。期待と不安でわくわくどきどきな残り2か月間を過ごしている。
【ピアサポートルームのWebサイト/Twitterの紹介】
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東京大学ピアサポートルーム
[WEB] http://dcs.adm.u-tokyo.ac.jp/psr/
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「コーチング」に学ぶ後輩との接し方
――――――――★ぴあサポメルマガ2月号★
こんにちは。寒さもピークを過ぎ、春に向かって暖かくなっていく時期ですね。ところで、春になるとサークルや研究室に新しいメンバーが加わり、多くの方が“先輩”になると思います。そこで今月は、後輩のマネジメントや指導育成、コミュニケーションに関わる「コーチング」について紹介したいと思います。これを機に後輩との接し方を見直してみませんか?
■目次■
1. コーチングとは
2. 傾聴・質問・承認
3. 実践とGROWモデル
4. さいごに
◇◆◇――――――――
1. コーチングとは
――――――――◆◇◆
まずコーチングとは何か。それは、コミュニケーションを通じて相手の気づきを促し、相手の内側にある答えやアイディアを引き出すことです。また相手が自ら考えて行動することを促し、やる気や責任感を引き出すことでもあります。コーチングは個別のアプローチで相手の可能性や自発性を引き出すという点で、教師や上司が一方向的にかつ画一的に知識や指示を伝達するティーチングや従来のマネジメントとは、一線を画していると言えます。
またコーチングはどのような場面で有効か。もちろんティーチングや従来のマネジメントが必要な場面もありますが、例えば学生団体で新たな企画に挑戦する場面や未知のものを探求する研究という場面では、先輩自身も答えがわからないため、後輩の考えや積極的な協力を引き出す必要があります。またサークルや部活動でも、試合等で臨機応変に対応できる後輩を育成し、チーム全体の士気やパフォーマンスを高めるのに有効です。
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2. 傾聴・質問・承認
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続いて、コーチングにおいて重要な3つのスキルを説明します。
(1) 傾聴
相手の話に最後まで耳を傾ける姿勢は、相手のアイディアや前向きな意欲を尊重し、相手に気持ちや考えの整理をしてもらうために重要です。たとえ忙しかったとしても、作業をしながらであったり話の途中で解決策や自分の解釈をはさんだりせずに、相手の話を全面的に受けとめる姿勢を心がけることが重要です。以下、具体的なスキルを挙げます。
・ハの字や90度の角度で向かい合う:対面では緊張感が高いため、相手に安心して話してもらえる環境を整えることが必要です。
・相手の話のペースに合わせてあいづちやうなずきを行う:相手の話すスピードや声の大きさ、トーンに合わせることで共感が伝わり、親密な関係を築くことができます。
・オウム返し:相手の話のポイントとなる言葉を繰り返すことで、話を聞いてくれていると安心でき、また自分の内面を客観的に捉え直すこともでき気持ちや考えの整理が促されます。
(2) 質問
指示や命令に頼らずに相手の自発性を引き出したい場合や、悩みや目標のように自分からは話しにくいことを引き出したい場合には、質問が有効です。また質問には、共に活動する仲間として相手を尊重しているということを伝える効果もあります。質問には大きく分けて二つの種類があり、一つは、YESかNOで答える「クローズド・クエスチョン」です。簡単に回答できるのが利点で、YESまたはNOを想定した念押しの質問(~ですね?)を適切に活用することで、相手の責任感や意欲を引き出すこともできます。もう一つは、自由に回答できる「オープン・クエスチョン」で、相手のアイディアや気持ちを引き出すことができます。ただし、質問が抽象的で漠然としがちなため、相手にとって答えやすい形で質問する工夫が必要です。例えば、理由やアイディアを“3つ”挙げてもらったり、選択肢を用意したり、パーセントや点数で答えさせたりすると良いでしょう。
(3) 承認
相手の考えや意欲を引き出し積極的な行動を促すためには、相手の考えや意欲を褒めて認めることが重要です。承認するためには、まず相手のことをよく観察する必要があります。わかりやすい結果だけでなく、プロセスやフォローなど日々の行動に細かく注目すると良いでしょう。そして観察したことを相手に伝えることで承認は成立します。観察して感じたことや思ったことを素直に伝えましょう。また叱らなければいけない場合には、感情的に“怒る”のではなく、観察した事実を理性的に伝える必要があります。言いにくい場合は、予め伝える宣言(今から私が感じたことを話しますよなど) をして、相手に心の準備をしてもらうと良いでしょう。
◇◆◇――――――――
3. 実践とGROWモデル
――――――――◆◇◆
実際にコーチングをするときには、「GROWモデル」というガイドラインが有効です。以下、部活動の後輩に対してコーチングを行う例で説明します。
まず後輩が達成したい目標“Goals”(試合で○○大学に勝つ)を引き出し共有します。次に後輩の置かれている現状“Reality”(前の試合ではディフェンスが甘く20点差で負けてしまった)を把握し、目標達成のための選択肢“Options”(ディフェンスの練習を中心に行う、ディフェンスの上手な○○先輩に教えてもらうなど)を数多く引き出し一緒に戦略を考えます。最後に後輩の意志“Will”を確認し、実際の行動(練習計画を立てさせるなど)へと結びつけます。
実際に後輩に接する場面で困ったときは、このモデルに沿って話を進めてみてください。
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4. さいごに
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いかがでしょうか。コーチングはものすごいスキルではなく、日々の実践で状況が少しずつ良くなっていくようなささやかなスキルだと思います。またスキルにだけ着目するのではなく、相手の可能性に対して信頼と期待を持ってサポートするという姿勢が重要だと思います。コーチングを通じて、皆さんがより良い人間関係や組織を築ければと思っています。
より詳細なスキルや実例を知りたいと思った方は、下記の書籍や参考文献を読んでみてください。
榎本英剛著(1999)『部下を伸ばすコーチング:「命令型マネジメント」から「質問型マネジメント」へ』PHP研究所.
上村光弼著(2002)『最強リーダーのパーフェクト・コーチング:部下のこころに火をつける9つの法則』PHP研究所.
【参考文献】
本間正人,松瀬理保著(2006)『コーチング入門』日本経済新聞出版社.
本山雅英著(2014)『大学生のためのコーチングとファシリテーションの心理学』北大路書房.
【筆者紹介】
工学研究科M2。
4月から社会人。期待と不安でわくわくどきどきな残り2か月間を過ごしている。
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